フィンケのバルブシステムは独自の構造を採っており、しかもそれは単なる軽量化に留まりません。最初のトリプルホルンの開発を期にヘルムート・フィンケのバルブの新たなる可能性の探求は始まりました。もともとロータリーバルブは真鍮を用いて円錐形に作られているのが普通で、製作段階で各々のバルブは各々のケーシングと擦りあわされて調整されています。150年もの伝統を持つこの方法は、バルブ自体の交換が非常に難しいのと、重量が大きくなるのが短所と言えます。
過去にいくつかのメーカーは、ロータリーを小さくしたり、ケーシングを薄く作ったりして軽量化を図りました。しかしそれらの試みは剛性にかけ、十分な信頼性が得られませんでした。
そこでヘルムート・フィンケは本来真鍮製のバルブを、重量軽減の面で大きな長所を持つプラスチック樹脂で作ることにしました。しかもバルブを円錐形ではなく、円柱形にし、本来はハンダ付けされているケーシングの下面もネジ止めにして取り外せるようにしました。この独自の構造により、万が一のローターの損傷にも交換が非常に楽にできるようになり、メンテナンスも非常にやりやすくなりました。
私たちは70年代初めよりこのシステムを採用しており、その間幾多の小さな改良を施してきました。科学技術の進歩にともない新たなプラスチック素材が生み出され、私たちのロータリーのマテリアルもまた進化してきました。開発当初は、水分や熱などによるプラスチック樹脂バルブのトラブルも経験しましたが、それらはすでに全て過去のものとなりました。
現在私たちは、航空機に金属の代用として使用されるプラスチック樹脂と同じものをバルブに採用しています。軸部分には、錆びる事もなく、また磨耗にも非常に強い特殊合金を使用しています。これらのマテリアルを用いて精密かつ、機密性の高いバルブを製作することに努めています。軽快なバルブアクションはもちろんのこと、高い機密性を保つことは楽器のレスポンスの良し悪しに大きく関係しています。これらの軽量化と、独自のメカニックを通じて私たちの楽器はまったく新しい響きと吹奏感を手に入れました。